<メンテナンスガイド> 履き込まれて着用感のある革靴でも、このような方法で「リフレッシュ」できるかも?!

こんにちは、インタレストです。

本日は、タフに履かれて相当の着用感が出ている革靴を、力業(ちからわざ)でまったく別の靴に生まれ変わらせる方法(笑)、私・店長Dはこのことを勝手に「リフレッシュ」と表現していますが、その「革靴のリフレッシュ」の一部始終をご紹介したいと思います!

主役はkokochi sun3の革靴、当店スタッフY私物の「zanpano(ザンパノ)」(牛革ライトブラウン)です!

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なお、これは最初に「くれぐれも」ということで申し上げますが、以下は「皆様にオススメしたい方法」というわけではございません。なぜなら、通常のケアと違って、実際にどう仕上がるかが想定しにくいからです。

今回は、店頭で実物をご覧になったお客様皆様が一様に褒めて下さる表情に仕上がりましたが、これはあくまで結果論で、過去様々な「リフレッシュ」をしてきた私・店長Dからしても望外です。実際になさろうという段にいたっては、経験がおありの方にご相談なさることを強くオススメいたします。

「へえ、最終的にはこんな風な方法もあるんだ」くらいの軽いお気持ちでご覧頂けましたら幸いでございます!

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それでは以下、順を追ってご案内いたします!

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1,このzanpano(2年半物)を「リフレッシュ」させます!

お洋服でも革靴でもジュエリーでも、お客様皆様に自信を持ってオススメするためには、私たち自身が身をもってその信頼性を確かめなければいけません。そのため、このザンパノには様々な「実験」、たとえば何週間も毎日履きまくってみたり、しかも必要なケアを(わざと)怠ってみたり、あるいは嵐の日に防水ケアなしで履いてズブ濡れにしてみたり・・・と、かなりの無理を強いてきました。

実際のところ、それだけタフに履き込んでも靴の構造的には何の問題もなく、kokochi sun3の革靴への信頼感は増すばかりなのですが、この履き方ですとさすがに革の銀面(=表皮)の傷みは著しく、「このザンパノにはそろそろ色を入れようか」と、持ち主であるYと話していたのでした。

この「色を入れる」というのが、今回の「リフレッシュ」のメインディッシュです。

こちらが、Y私物のザンパノ(2年半物)です。
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こうして画像を見る限りは何でもなさそうなのですが、実物を見る限り、革の色味は全体的にあせ気味で、とりわけ皺の入った部分には銀面のひび割れもあり、それに伴う乾燥も目立ちます。ただ、クリームを入れるとツヤは上がるので、決して「手遅れ」の状態ではありません。(逆にいうと、これまでの過酷な履き方の割に、よくこの程度で済んでいるなあという気もします。)
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こちら、2年半前の新品時の画像です。今はなくなりましたが、この頃は麻ひもが付きました。また、森田さん自身がバーナーであぶることによる「焼け」の加工もありました。懐かしい・・・笑。
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いやあ、やっぱり新品時の革はツヤツヤしていますね~!
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2,<下準備> クリーニング~下地づくり

この「下準備」の項目は、今回の「リフレッシュ」のみならず、革靴の通常のメンテナンス・ケアのときにもぜひなさって下さい。・・・そう、次の「リフレッシュ」はともかく、この「下準備」はあまねく革製品好きの方々にぜひにとオススメいたします!

クリーニング: モウブレイ「ステインリムーバー」(税抜き2,000円)

いつもいつも申し上げますが、お化粧でたとえたときに「クレンジング剤」に当たるのがこの「ステインリムーバー」です。革靴に付着した汚れと一緒に、前回塗ったクリームなども落として、革を「すっぴん」の状態にする。それが、この「ステインリムーバー」の役割です。(スエードやヌバックなどの起毛レザーにはつかえません。ただ、用量を間違えなければコードバンには普通につかえます。)
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粘性(ねばり)のまったくない、真水のような液体(水性)です。
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革に直接垂らすのではなく、やわらかい布などに染みこませ、それをなじませてから・・・
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革にやさしく当てて、「拭く」ようなイメージです。「磨く」でも「こする」でもなく「拭く」。むしろゴシゴシこすると、革を傷めてしまったり、不必要に色が落ちてしまったりというリスクが生じます。
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革がしっとりとすればおおよそ十分です。「濡らす」必要も特にありません。揮発性の強い液体なので、「しっとり」程度であれば、ほんの数分で水分は抜けていってしまいます。
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左が「ステインリムーバー」後、右が前。しっとりとして、そしてツヤがなくなっていれば成功です。(ゴシゴシこすらなければ、失敗のリスクはほとんどありません。)
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ちなみに、ご面倒であれば、「ステインリムーバー」は、ケアのたびに毎回やらなくても大丈夫です。私・店長Dは、頻度にして3回に一度程度、期間にして半年に一度くらい、この「ステインリムーバー」から始めるフルメンテナンスを施します。それ以外のときは、クリームを塗ってブラッシングをするだけの簡易メンテナンスに留めます。(そのくらいでないと、なかなか続きませんので。汗)

 

下地づくり: モウブレイ「デリケートクリーム」(900円)

私・店長Dが所有するクリームで、最も回転が速い(=すぐになくなる)のがこのモウブレイ「デリケートクリーム」です。理由は簡単で、「(起毛レザー相手のときを除いて)あらゆるレザーのケアのときに必ずつかうから」です。

私自身は、「デリケートクリーム」を、「仕上げる」というより「下地をつくる」ためにつかいます。お化粧をするとき、クレンジング剤でお肌を「すっぴん」にしたあと、いきなりファンデーションを塗るのではなく、化粧水や乳液を入れてお肌の状態を整えてますよね。その化粧品・乳液、いわゆる「基礎化粧品」として、私はこの「デリケートクリーム」をつかっています。

「ステインリムーバー」ほどではありませんが、この「デリケートクリーム」も粘性が低く、たとえばふたをしないでビンを傾けると、そのまま流れ落ちてしまいます。
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主成分は天然成分であるラノリンで、かつ無色半透明なので、私は「デリケートクリーム」は素手で塗ってしまいます。(*若干ながら有機溶剤も含まれていますので、石油系溶剤にアレルギーがおありの方は布やブラシなどをおつかい下さいませ。)
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手のひら半分ほどに、クリームの粒ができないくらいまで薄く広げます。
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あとは、その手で革にさわさわと触れていきます。ここでも「塗る」というよりは「触る」というくらいで十分です。
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この「デリケートクリーム」のプロセスはあくまで「下地づくり」。このあとメインディッシュで、効能の強い仕上げ用クリームを重ね塗りしますので、「デリケートクリーム」はごく薄くぬるようにします。
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「デリケートクリーム」をごく薄く入れた状態では、特にツヤは上がりません。ただ、この地味に見える一手間によって、次に効能の強いクリーム(→得てして革への負担が大きいクリーム)を入れたときに革がビックリしてしまう、具体的にはシミになったり変色したりというリスクを、グッと減らしてくれます。
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3,<リフレッシュ> 色入れ~ブラッシング

禁断の(←?!)「リフレッシュ」のプロセスに入ります。今回の「リフレッシュ」の主たる目的は、革の傷んだ表情を消してしまう「色入れ」。また、今回は「有色のクリームナチュラーレの補色効果の程度」を確かめたかったので、その「実験」の意味合いもあります。

私・店長Dにとって「補色効果の強いクリーム」といえばモウブレイ「シュークリームジャー」(税抜き800円)で、本来ならこれをつかおうというところなのですが、今回は相手がタンニンなめしの牛革ということで、どちらかといえば天然成分由来のクリームをつかいたい・・・でも色は入れたいということで、「クリームナチュラーレ」のダークブラウンをつかうことに、これは事前に決めていました。

でも「天然成分由来のクリームで着色」って、響きからして矛盾を感じますよね。結果はどうだったのでしょうか・・・!

色入れ(「リフレッシュ」): モウブレイ・プレステージ「クリームナチュラーレ(ダークブラウン)」(税抜き2,000円)

ダークブラウンです。普通色を入れるときは、革の色味に近い、今回の場合はライトブラウンやミディアムブラウンからつかい始めるのですが、今回はガラッと雰囲気を変えて生まれ変わらせる「リフレッシュ」が目的ですから、そんな繊細なことはいたしません(笑)。繰り返しになりますが、この色選びから既にイレギュラーなので、決してこの内容をオススメするということではございません。
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しかも、これもセオリーに反するやり方ですが、ドバッと大量につかいます。
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(効能の強い→革への負担が大きい可能性がある)仕上げ用のクリームはごく少量をごく薄く塗るというのが鉄則ですが、ここでは明確な意図を持って、結構な量をガンガン塗っていきます。
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塗っているときにクリームの粒が浮くような量を塗るのは良くないとしたものですが、そんなことは「リフレッシュ」の際には関係ありません。
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塗っているときから感じていましたが、「結構(色が)入るなあ」と。クリームナチュラーレとこのタンニンなめしの牛革との相性が良いことは分かるのですが、オイルだけでなく色もしっかり入っていくという印象を持ちました。
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一度ならず二度、三度と重ね塗りして、ガンガンクリームを入れていきます。ふと横で見ているYの顔を見たら、言葉を失ってものすごく不安そうな顔をしていて、思わず吹き出してしまいました(笑)。「大丈夫だから!カッコ良くなるよ!」と、根拠レスの私。
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コバには同じくダークブラウンのコバインキを。オリジナルは、このコバ処理は「なし」で無色だったのですが、今回はボディの革の色がダークブラウンになる(はず!)なので、コバがナチュラルだと浮いてしまいます。
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片足塗り終わりました。そうですね、この「リフレッシュ」は「拭く」でも「触る」でもない、まぎれもなく「塗る」、「塗り込む」、「塗り込みまくる」という感じで。
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「これでこのまま色が残ったら上等のできだな」と、私はニンマリ。
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もう片方は、もちろんオーナーであるY自身がクリームを入れます。彼女にとってこの手のイレギュラーなケアは初めてだったので、ずいぶん時間がかかって大変そうでした。
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Y「これでどうでしょう」、D「もう片方と色味が全然違うよね」、Y「これでどうでしょう」、D「コバに色が入っていないよね」・・・と小一時間、何度も何度も。何より自分の愛用する靴なので、とても頑張りました。
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そして、着色効果を最大限にするために、ブラッシングをせずそのまま数時間天日干しです。もうこの時点では、私は「これは良い『リフレッシュ』になるぞ」と、自信たっぷりでした。結果的に、「有色のクリームナチュラーレは補色効果もしっかりある」といえると思います。
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仕上げのブラッシング: コロニル「馬毛ブラシ」(1,200円)

数時間の天日干しののち、いよいよ最後のブラッシングです。余分なクリーム・・・というと、今回の「リフレッシュ」の場合は9割方余分なクリームだと思いますが(笑)、それをブラッシングによってしっかりそぎ落とし、その下に隠れている「リフレッシュ」後の新しい革の表情を引き出します。

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このブラッシングの作業は圧巻でしたね。私自身も、さすがにここまでの経験は初めてでした。ブラシを往復させるたびに、どんどんどんどんツヤが上がっていくんです。最初がコテコテにマットだったというのも大きいとは思いますが・・・
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こちらがブラッシングをしていない側面で・・・
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そして、こちらがブラッシングをした側面です。ほんの数分でこのツヤの上がりです。やっぱり革は生きているのですよね!
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片側、仕上げまで完了しました。私たちがいつも、ブラッシングは革靴メンテナンスの「基本の『き』」と申し上げる理由、こうして見比べて頂くととても良くお分かり頂けることと思います。
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私にとって、一番大きなポジティブサプライズは、「ダークブラウン」というよりは、赤みが差した「ダークバーガンディ」風の、実にニュアンスの富んだ色味に仕上がったことです。元の色味が赤みの入ったライトブラウンだったのが良かったのだと思います。
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4,「リフレッシュ」後のzanpanoをご覧下さいませ!

両足ブラッシングをして、最後にサラッとから拭きして、仕上げまで完了しました。「リフレッシュ」によって生まれ変わったYのザンパノ、もちろんお好みはあるかと思うのですが、今のところ店頭での評判は絶好調です。実物を見て下さったお客様皆様は一様に、この「色味」を褒めて下さいます。

正直、ここまでツヤが上がるとは思いませんでした。「リフレッシュ」前の革では、どうやってもここまでの表情にはならなかったからです。
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一方、「ワークブーツなのだから、これだとちょっと光りすぎ」とお感じになる方もいらっしゃると思いますが、それは大丈夫です。何度か履けば、このレベルのツヤはすぐに落ち着いてしまいます。(下の「BEFORE / AFTER / AFTERのAFTER」をご参照下さいませ。)
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実はひもの色も替えています。もともとはミディアムブラウンのロウ引きひもを入れていたのですが、革の新しい色味に合わせて、ダークブラウンのロウ引きひもをセレクトしました。
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ん?!近づいてよく見てみると・・・
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そう、実は靴全体に色ムラがあります。革の部分部分によって色が入りやすいところ・入りにくいところがあって当然ですよね。考えなしにガンガンダークブラウンのクリームを入れていたようですが、色ムラができるであろうことはもちろん想定内です(過去の経験上)。
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ただ、その色ムラがここまでカッコ良く染みこみ、まるでそうデザインされているかのように入ったというのは、事前に予想できませんでした。ニュアンスに富んだ色味と同様、この色ムラの「味」もポジティブサプライズでした。
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コバにもバッチリ色が入っていますね。
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それから、ボディにダークブラウンのクリームを入れているとき、ついでにソールの側面にもそのクリームを塗りました。光沢が戻っていますよね。
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このかかとの赤いタブを見ると、「ああ、あのザンパノだったものだ」と分かったりして。笑
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このタブにはマスキングテープを貼ろうか迷ったのですが、「いや、はみ出したり、ブラッシングで色が乗ったりしてもカッコイイはず」と、結局保護はしませんでした。これも吉と出ましたね~。いろいろ大当たりです。
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6,BFORE / AFTER / AFTERのAFTER

最後に、「リフレッシュ前」(BEFORE)、「リフレッシュ直後」(AFTER)、「リフレッシュから2週間後」(AFTERのAFTER)の比較画像をご覧下さいませ!「AFTERのAFTER」では既にYが履いていますので、ツヤが落ち着いて履きやすい表情になってきています。靴自体の色落ちやソックスなどへの色移りなどは一切ありません。

BEFORE
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AFTER
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AFTERのAFTER
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BEFORE
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AFTER
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AFTERのAFTER
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BEFORE
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AFTER
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AFTERのAFTER
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BEFORE
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AFTER
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AFTERのAFTER
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本日は以上です!

一つのチャレンジ&トライアルとして、まさしく「ご参考」程度に頭に留め置いて頂けましたらと思います。クタクタになって「もうダメかなあ」と思える革靴でも、割となんとかなってしまうものなんです。さすがに、この「リフレッシュ」をお客様の靴でお引き受けするということはいたしませんが、ご相談はいつでもお気軽にお寄せ下さいませ。

それから、何もこんなにリスキーな「リフレッシュ」をしなくても、靴の雰囲気を変えることはいくらでもできます!一番簡単にしかもガラッと雰囲気を変えられるのは、ひもの種類や色を別のものに替えることです。私自身も季節や気分・シチュエーションによって、自分の靴のひもはしょっちゅう替えて楽しんでいます。あとはやはり、通常のメンテナンス・ケアですね!革がつややかになってくれると、ご自身の気持ちも軽く明るくなっていくと思います!

森田さんたちkokochi sun3の靴職人たちが心を込めて一足一足つくっている革靴たち、どうぞ末永くお楽しみ下さいませ!

 

明日は火曜日で定休日、また明後日24日(水)に、多くのお客様のご来店とお問い合わせを、心よりお待ちしております!

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